自然っていうものは本当に気まぐれ…ポカポカ陽気が続いたと思えば、思いがけない大雪。この山行の
前日は桑名市の西部でも少しばかりの降雪があり、真冬に舞い戻ったような感覚だ。こんなチャンスを逃 すまいと、あえて難易度の高いルートに挑戦した。
今回歩いた日蔭尾根は三ッ口谷の左岸に連なるバリエーションルート。ここ数年、無雪期の踏み跡は
かなり定着してきたが、尾根の取り付きから足場に困るような急登が続き、その先も岩稜帯のヤセ尾根 に苦労させられる。
駐車地となるのは、冬場の定番スペース・湯の山温泉を抜けた先の最奥P。この日は何となく除雪され
ていたけれど、FFのスタッドレス車では残念ながら登り切れず。仕方ないので、長石谷の取り付き近くの 空き地を拝借し、8時10分にスタートを切った。
民家のわきをすり抜け、御在所・中道&一ノ谷方面への分岐地点へ。すでにここでもくるぶし上まで雪
が沈む。三ッ口方面へ向かう鉄橋はご覧の通り↑。つまり、トレースは無いということか。。。
トレースは無くとも、大堰堤までは三滝川の右岸に沿って歩けば特に問題ない。傾斜もゆるゆる、雪質
もふかふか♪歩きやすいことこの上ない。
しかし、やはり足に負担がかかっているのは確かで、大堰堤に到着して時計をのぞき込むと、無雪期の
約1.5倍の時間を要していた。何とか、昼までに山頂にたどり着きたいなぁ。
大堰堤から自分のトレースを見下ろしたのが上のカット↑。できる限りショートカットして歩いているつも
りでも、結構無駄が多いものですねぇ(笑)
雪に覆い尽くされた堰堤の縁をたどり、記憶を頼りに日蔭尾根に取り付く。特に厳しいのが、尾根芯の
たどり着くまでの急登。平均斜度は45度、いや感覚的には60度ぐらいはありそう。新雪を力いっぱい蹴 り込み、一歩一歩足場を固めて登るも、前方からは雪崩のように雪が覆いかぶさってくる。滑落までの危 険は無さそうだけど、安全を期して木の根元に足を掛けながらのスリリングな登高だ。
1m、また1mと徐々に高度を稼いでいくと、少しずつ展望が広がってくる。右手に広がるのが、鈴鹿の
盟主・御在所岳のどっしりとした山容。自宅辺りから眺めるときれいな△を描く山も、こちらから見るとまっ たく印象が違うのが興味深い。
尾根芯に点在する岩場の危険箇所を1つずつクリアしていくと、背後の展望も徐々に開けてくる。上写
真右手の雲母峰の状況は少し分かりにくいが、長石尾根はたっぷりとした雪をまとっている。
まさに「ファイト〜、一発〜♪」のノリでガシガシと岩場をこなし、そろそろ疲れもたまってきたとき、悲劇
は訪れた。何と左足のアイゼンが脱落しているではないか。どうやら岩角にバンドが引っ掛かり、抜け落 ちてしまったようだ。確かに、締め上げがちょっと緩かったかもしれない…油断大敵。ついでにココまで来 て緊張の糸がプツンと切れてしまい、一気にテンションダウン。。。
ふと手元の高度計を見ると、co890mを少し越えたところだった。ここまでの所要時間と高度差を計算
してみると、1時間あたり190mほどしか登れていない。計算上では、この先1時間半ほどで山頂に立て るが、もう雪は「これでもか」というぐらい満喫したし、下山ルートもきっとノントレース。仕方ない、もう下山 しようっと。
ただ、想定はしていたももの日蔭尾根の下りは、登り以上にスリリング。覚悟を決めて急斜面に突っ込
んだけれど「下っている」というより、「滑り落ちている」といった場面も。ここでも木の根元を利用させても らい、万一の滑落に備える工夫が必要だ。
全身雪まみれになりながら、無事に大堰堤へと帰還。予想通り三ッ口谷方面へ向かったトレースは無
し。風の音、そして雪解け水のせせらぐ音だけが体を包んでくれればいいものの、鈴鹿スカイラインの工 事車両の大騒音が響き渡り、興ざめ感たっぷりの残念な空間だ。
日蔭尾根を離れてからは、もはや惰性で駐車地を目指すのみ。普通なら行きのトレースを忠実にたどり
そうだが、ここはあえて行きのトレースを数m外して歩く。昼も近くなると、あれほどふかふかだった雪も少 しずつ湿り気を帯びてくる。そんな雪質の微妙な変化を楽しめるのも、晩冬の雪山歩きの醍醐味だ。
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